2体のエンタングルメント(量子力学的な相関関係)の強さを測る指標の一つ。系Aのフォン・ノイマンエントロピーをSA、系BのそれをSB、系AとBの全体系のそれをSABとしたとき、系AとBがエンタングルしていないときは、全体のエントロピーは、部分のエントロピーの和であるから、
SAB=SA+SB
となるが、エンタングルしているときはそうならない。
特に、
SAB=0
のとき、すなわち全体系が純粋状態のときには、
SA=SB≠0
となるが、この値は系AかBかによらないので単にSと書くと、これはエンタングルメントがないとき、
S=0
となり、エンタングルメントが最大のとき最大値となるので、Sをエンタングルメントエントロピーと呼んでエンタングルメントの強さの指標とする。
ただし、
SAB≠0
のとき、つまり全体系が純粋状態でなく混合状態のときは、一般に、
SA≠SB
であるし、エンタングルメントの強さ以外に元々のSABの非純粋性も反映しているので、エンタングルメントの指標としては使えない。
エンタングルメントエントロピーは物性の研究で用いられることが多い。全体系が混合状態でも使えるエンタングルメントの指標もあるが、今のところ、物性研究ではもっぱらエンタングルメントエントロピーが用いられている。
なお、フォン・ノイマンエントロピー(Von Neumann entropy)とは、対象系に対する知識の欠如の度合いを表すシャノンのエントロピー(Shannon entropy)を量子系に拡張したもの。その意味では熱力学エントロピーの拡張だが、孤立系でのエントロピー増大則(熱力学第二法則)を満たさない点は異なる。