原子数個が動くナノマシン型電気スイッチ。金属原子を1個単位で移動させ、対向電極との接触、非接触でオン、オフする。硫化銀で覆った銀電極と白金の電極を1nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)程度の間隙で対向させることで実現された。順方向の電圧を加えると、硫化銀の表面に銀原子が現れ、原子単位で白金電極に接触し(オン状態)、逆方向に電圧を加えると、銀原子は硫化銀中に戻りスイッチが切れる。原子数個の移動距離は短いので高速で動作し、原子単位で動作する究極の高集積スイッチとして期待される。原子の移動を利用する原子スイッチでは信号入力の頻度により接続がより強固になるユニークな特性がある。これは神経回路におけるシナプスの結合強度の変化に類似しており、人間の脳のように記憶もすれば忘却もするシナプス素子(synapse device →「人工シナプス」)を実現できる可能性もある。従来の単なるスイッチと異なり、結合強度が入力頻度により変化する素子を脳型スイッチ(brain-type device)と呼ぶこともある。
スイッチのサイズが小さいうえに、待機時の電力が不要であるほか、半導体スイッチと異なり、放射線や電磁ノイズによるエラーが生じないことから、改良された原子スイッチは実用化のレベルに入っている。