神経細胞では細胞が突起を成長させる際、成長に必要な材料である膜材料を遠く離れた細胞体から成長先端部に送り込むことが知られている。顕微鏡でその様子を観察すると、細胞の軸索に沿って粒状のベシクル様のものが動いている様子が観察できる。ベシクル(vesicle)は小胞状になった膜小胞で、細胞の膜材料として使用されており、細胞骨格などの細胞内構造体を利用して運搬されていると考えられている。また、チューブリンで構成された微小管やアクチンフィラメントなどが分子のレールとして物質輸送に利用され、現在、同様なレール状の構造体が分子の自己組織化を利用したボトムアップ手法で工学的に作製されている。この分子レールは、上記物質輸送とは全く異なるメカニズムではあるものの、たんぱく質分子やナノ粒子を結合すると、レールに沿って運動することが確認されており、微量物質の輸送や分離、解析等に応用できると期待されている。