固体中を伝搬するフォノン(phonon 音の量子=最小単位)の波長オーダーを基に、異なる弾性体の周期構造(ほとんどの場合は穴の開いた構造による空気と固体材料の周期構造)を実現することにより、特定の周波数のフォノンが伝搬できなくなるフォノンギャップ(phonon gap)や、フォノンを特定方向に導くフォノン導波路(phonon waveguide)を実現することができる。これらはフォノンの波としての干渉効果に基づくもので、光の量子であるフォトン(光子)に対するフォトニック結晶と同様の原理で働くことから、フォノニック結晶と呼ばれている。フォノニック結晶では自然界には存在しないユニークなフォノンの分散特性が得られる。熱はフォノンにより伝えられるので、熱伝導をフォノニック結晶で制御して、温度差を電圧に変える素子が実現すれば、これまでにない高性能な熱電性能を引き出したり、特定の周波数のフォノンを特定の方向に伝搬させることで、効率的な排熱を行ったりすることが考えられる。フォノニック結晶でフォノンの流れを制御する技術は、量子トランスデューサー(量子力学的な性質を保ったまま、異なる物理量間の変換を行うもの)などにおいて、フォノンの量子状態を制御するのにも役立つことが期待される。フォノンの伝搬を電気的に制御することが可能なフォノニック結晶、いわば動的フォノニック結晶(dynamic phononic crystal)も実現されている。