炭素のsp2結合(ハチの巣状の格子でつながった結合)で構成されるグラファイトに対して、同様の構造をもつ六方晶窒化ホウ素(hexagonal-BN)が存在する。この六方晶窒化ホウ素がカーボンナノチューブと類似のチューブ状形状を取るものが窒化ホウ素ナノチューブである。機械的強度や熱伝導率はカーボンナノチューブにほぼ匹敵するが、窒化ホウ素の特徴として、大きなバンドギャップ(band gap 電子が存在できないエネルギー領域)を有し、電気を通さない絶縁体で、透明である。化学的に安定で耐熱性にも優れており、超軽量素材や絶縁性放熱材料などとして期待が高まっている。アーク放電法を用いて初めて合成されて以来、レーザーアブレーション法、化学気相成長法、熱分解法、プラズマを用いて合成する方法や、カーボンナノチューブの炭素をホウ素、窒素に置換する方法などが大量合成に向けて検討されている。グラフェンと同様に、単層の窒化ボロン原子層も可能である。絶縁性に優れた原子層膜として、多くの原子層材料の特性を最大限に引き出す基板や絶縁膜として原子層ヘテロ構造(atomic layer heterostructure 異なる原子層素材が積層した構造)に欠くことのできない原子層膜となっている。