地球は、化学組成や物理的性質の異なる部分が集まった一つの巨大なシステムである。地球システムを構成する部分は、サブシステムと呼ばれる。地球のサブシステムには、大気、海洋、地殻、マントル、核のほか、雪氷圏、陸水圏や生物圏などがある。地球環境は、地球システムの状態であり、地球システムが変動することによって地球環境も変動する。地球の気候状態を決めるサブシステムの集合を気候システムと呼ぶが、長い時間スケールでみると、プレート運動によって大陸と海洋の分布が変化することやマントルの大規模な上昇流(マントルプルーム)の活動(→「プルームテクトニクス」)の活発化によっても気候は変化する。さらに長い時間スケールでみると、太陽光度も太陽系誕生から現在までの間に徐々に上昇しており、太陽活動の長期的変遷も気候を決める重要な要因の一つである。生物進化による植物の陸上への進出も気候や地球表層環境に大きな影響を与えた。地球システムはさまざまなフィードバックで地球の環境状態を作り出している。海底にマグマが大量に流れ出して地層中のメタンハイドレートが溶け出して気候が温暖化したこともあるが、同じマグマの上昇でも、ヒマラヤやチベット高原のような大きな山塊を隆起させた場合には、気候が寒冷化に向かったように、似たような原因でも地球システムの相互作用によって、まったく異なる状態を生み出すことがある。地球環境問題の本質的理解には、人間社会も地球システムの中に位置づける必要がある。