大地震発生前に震源域の深部で起こると考えられる、ゆっくりしたずれの動き。岩石実験や摩擦則などから、前兆すべりの存在は明らかとなっているが、大地震前に明瞭に観測された例はない。東海地震では、この前兆すべりを捉え、これが急速に成長して地震発生へと至る前に、警戒宣言を発して減災に役立てることとしている。2009年8月11日の駿河湾地震の際には、この地震が前兆すべりを誘発したかどうかが問題となった。地震は駿河湾内の地殻の浅い場所で起こり、前兆すべりは静岡県北西部から長野県南東部などの深い場所で発生すると予想されているので、両者の距離が遠く、誘発の可能性は低い。実際の観測からも前兆すべりは捉えられず、駿河湾地震は想定される東海地震に結びつくものではないと判断された。