2011年の台風12号は、9月3日に高知県東部に上陸して四国・中国地方を縦断し、紀伊半島などに記録的な大雨を降らせ、平成になってから最悪級の被害をもたらした。死者行方不明者は全国で94人。そのうち和歌山県は57人、奈良県で24人に達した(11年12月15日消防庁発表)。紀伊半島では大雨による河川の氾濫や浸水に加えて、激甚な土砂災害が発生した。岩盤が土砂と一緒に崩れ落ちる深層崩壊も多く、崩れた土砂が河川をせき止めて天然の土砂ダムがいくつもできた。さらに大雨が降ると越流して土砂ダムが崩壊する二次災害も懸念されている。台風12号が大型でゆっくりと進んだため、湿った気流が流れ込み続け、大雨が8月30日から9月5日まで長期間にわたって降り、奈良県の上北山村大台ヶ原では総降水量が2436ミリで、年間降水量の4分の3に達した。日本の東の海上に勢力の強い高気圧があって日本付近から朝鮮半島へと張り出して行く手をはばみ、台風を押し流す偏西風も沿海州からサハリンへと日本の北を流れていたことによって台風12号の速度が遅くなったことが、大量の雨を降らせた原因である。