GPSを利用した気象学。GPSとは、Global Positioning System(全球測地システム)の略語で、宇宙にある人工衛星からの電波を利用して、地球上での位置を測定するシステムである。自動車のカーナビやスマホにも使われており日常生活に欠かせない手段となっている。電波は空気を通過してくるために、空気がない場合と比べると到達時間が遅れることになる。この遅れは衛星と地上の間にある空気の密度と、それに含まれる水蒸気量に依存する。したがって、地上にあるGPS受信機で観測される遅れの量を解析すると、その間の気温は他の観測から推定できるため、衛星と地上との間にある水蒸気量の積分値(可降水量)が推定できる。この可降水量を観測データとして、4次元同化システムの中に入れることにより、大気中の水蒸気場の解析の精度を向上させることができる。GPSの受信機は、地上に多く配置できるので(日本では、地震予知として地殻変動を観測するために数多くの観測点がある)、GPSを用いた可降水量の観測は、水蒸気場の水平スケールの細かい解析につながり、メソスケール現象の予測の向上につながることになる。