映画監督のジェームズ・キャメロン氏がマリアナ海溝の海底探索に単独で挑んだ際に乗船した有人潜水艇。2012年3月26日、ジェームズ・キャメロン監督は、地球上で最も深いマリアナ海溝のチャレンジャー海淵の1万896メートルの海底に到達した。これは1960年にアメリカのバチスカーフで潜航したアメリカ海軍のドン・ウォルシュ氏と、フランスの海洋学者、ジャック・ピカール氏以来の3人目の最深点への探訪となった。この時に用いられた潜水船はディープシー・チャレンジャーという1人乗りのサブマーシブル(潜水艇)であった。通常の有人潜水艇は3人乗りだが、キャメロンは自分自身で操縦し、観察とサンプリングを行った。ディープシー・チャレンジャーは、日本の有人潜水調査船「しんかい6500」やフランスの「ノチール」のような従来型ではなくて細長いロケット型である。その仕様は筒の長さ7.3メートル、空中重量11.8トン、耐圧殻の直径1.22メートル、内径1.09メートルで最大速度は3ノットである。潜航の仕方は従来のサブマーシブルが水平にくるくる回転しながら1分間に約43メートルの速度で沈降していくのに対して、頭を下にしてその数倍の速度、1分間に150メートルで沈んでいくという違いがあり、マリアナ海溝では約1.5時間で海底に到達した。大型の生物は発見されず、カイコウオオソコエビのような端脚類が見られたという。