宇宙にある「見えない」物質のこと。銀河団の質量は、構成する各銀河の明るさから推定される値よりも、各銀河の運動から求めた質量の方が10~100倍も大きいことから、80年ほど前から見えない物質の存在が知られていた。また渦状銀河では回転速度から求めた質量の方が星の数から期待される質量よりも大きく、ダークマターは個々の銀河から宇宙全体に存在すると考えられている。ブーメラン・プロジェクト、WMAPやプランク衛星などの観測から、ダークマターは宇宙を構成する全エネルギーのうちの27%を占めることがわかった(→「宇宙」)。ダークマターの正体として、観測にかからないふつうの物質や、ほとんど物質と相互作用をしないニュートリノなどが考えられてきたが、ダークマターの存在量を説明できないことがわかった。最近はニュートラリーノに代表されるWIMP(Weakly Interacting Massive Particles)と呼ばれる、電磁気的な相互作用をほとんど起こさない素粒子からなる「冷たいダークマター」が最有力候補である。そこで、WIMPどうしの衝突時に発すると考えられるガンマ線の検出が、2008年に打ち上げられた国際ガンマ線天文衛星「フェルミ」によって試みられているが、それらしい兆候はいまだ検出されていない。