H.ポアンカレは、以下のような操作でホモロジー群を導入した。まず、曲面を三角形分割しておく。次に、曲面の中で1周する折れ線を、向きをこめて考える。この1周する折れ線の中で、いくつかの面を合わせたものの境界として実現されるものpは、0と同値とし、これをp~0と表す。また、二つの折れ線qとrをあわせたものをq+rとおいて、q+r~0のとき、q~-rとする。1周する折れ線にこの「~」の同値類を入れたものは可換群となる。これが、一次元ホモロジー群である。ポアンカレは、三次元空間の中の閉じた二次元曲面を一次元ホモロジー群で分類した。
三次元曲面のときは、三角形を三角錐にし、三角形分割して同様のことを考える。これによって、二次元ホモロジー群が得られる。
同様にして、n次元多様体には、n次元錐を用いた三角形分割ができれば、ホモロジー群を定義することができる。
たとえば、図のようなドーナツ状の物体の表面を三角形分割し、その辺だけを伝ってk、m、nのような一周する折れ線を作ってみる。この中で、kはいくつかの面の集合の境界になっている。ところが、mやnはそのような面の集合の境界にならない。このような1周する辺の集合全体において、kのようなものを0と考えると、この集合はmとnを本質的な要素とする群の構造をもつことになり、これをこの物体の一次元ホモロジー群という。二次元ホモロジー群も同様の操作で得られる。
このような群での研究をホモロジー理論(homology theory)という。これにより、不動点定理(→「不動点」)が証明できる。また、図のmやnに実数を対応させる関数により、ホモロジーと双対な概念ができ、これをコホモロジー(cohomology)という。