2以上の自然数は、必ず素数(1と自身以外に約数をもたない2以上の自然数)の積に分解され、その分解の仕方は順番を除けば一通りに表すことができる。この事実を素因数分解定理あるいは算術の基本定理(fundamental theorem of arithmetic)という。証明は少し面倒だが、具体的な積の形は、与えられた自然数を素数の小さいほうから、答えが素数になるまで割るだけ割っていけば得られる。
たとえば、「360」を素因数分解してみよう。360は2で3回割れるので、
360÷(2×2×2)=45
これを3で2回割ると、
45÷(3×3)=5
で、素数になるので、
360=(2×2×2)×(3×3)×5=23×32×5
と表現できる。
素因数分解定理によれば、同じ数は同じ素因数をもっているのだから、ピタゴラスの定理(三平方の定理)である三角形が直角三角形かどうかの判定には役に立つ。
たとえば、三角形のそれぞれの三辺の長さが161、132、81であるとき、これが直角三角形にならないことはすぐにわかる。なぜなら、
1612=1322+812
が成り立つならば、
1612-812=1322
となるはずである。しかし、この左辺は、
(161-81)(161+81)=80×242
となる。
この80を素因数分解すると、
80=2×2×2×2×5=24×5
であるが、右辺は、
1322=24×32×112
であって、5が因数にないので、この等号は成立しない。