1929年、量子力学は粒子の力学から場の力学に拡張されて、場の量子論が物質の集団運動や素粒子を記述する基礎となった。場の変動を量子化して粒子像が導入される。場の最低エネルギー状態を「真空」といい、そこからの励起・脱励起を粒子の生成・消滅として扱う。この真空は問題ごとに定義される。例えば一対の金属導体板で区切った空間と区切りのない空間の真空は違い、これが原因で、金属板の間に力が働く(カシミア効果 Casimir effect)。加速度運動の検出器に放射がかかるウンルー効果(Unruh effect)やブラックホールのホーキング効果(Hawking effect)も複数の真空の存在に原因がある。真空は粒子・反粒子(→「反原子」)が生成・消滅する“沸き立つ”状態にある。