摩擦や空気抵抗がない場合のニュートンの運動法則や量子力学の法則はエネルギーの散逸を伴わない可逆(reversible)な力学法則であるが、マクロな現象を記述するには一般に散逸効果を含む不可逆な力学法則が必要である。このような力学モデルを散逸力学系と呼び、開放系の自己組織化現象やカオス現象の研究に広く用いられている。散逸と強制外力を含む非線形振り子や電気回路は低次元(すなわち少数の変数を含む)散逸力学系で表される。散逸力学系は一般に非線形微分方程式によって表されるが、そこに含まれるパラメーター(環境条件を表す)を変化させたとき、方程式の解の性質が突如変化する場合がある。これを分岐(bifurcation)と呼び、新しいマクロ状態の出現を表す。空間的に均一な状態が不安定化してチューリングパターン(Turing pattern)という周期構造が現れる現象は分岐の一例である。自励振動(self-excited oscillation 初期条件によらない定まった振幅をもつ振動)の発生は特にホップ分岐(Hopf bifurcation)と呼ばれる。