通常の相転移はミクロな要素原子、分子、スピンなど)の秩序だった配列や配向が熱ゆらぎ(thermal fluctuation)の強弱によって形成されたり壊されたりすることで起こる。したがって、熱ゆらぎの強度を表す温度が、相転移を制御する重要なパラメーターである。しかるに、熱ゆらぎが無視できる絶対零度(-273.15℃)の近くでは、熱ゆらぎのかわりに不確定性原理(uncertainty principle)に基づく量子ゆらぎ(quantum fluctuation)の存在が重要で、その強度と要素間相互作用の強さの相対優位性が変化することで秩序相(ordered phase)と無秩序相(disordered phase)との間に転移が起こる場合がある。これを量子相転移と呼んでいる。この場合は、圧力や外部磁場が制御パラメーターである。ある種のスピン系や高温超伝導体でこのような転移が起こることが知られており、後者では超伝導の発生機構に重要な役割を果たすと考えられている。