物理学の法則は素粒子レベルの法則から流体力学法則のようなマクロな法則までさまざまな階層から成っているが、計算機の能力の著しい向上とともに、できるだけ基礎的な原理に基づいた数値計算によって原子分子集合体の性質を明らかにしようとする一つの流れが、凝縮系物理学(→「不可逆過程」)や化学の分野で生まれた。第一原理といっても、原子核と電子を基本単位として、これらに対して成り立つ量子力学法則を基礎としているわけで、原子核物理学・素粒子物理学の法則までさかのぼるわけではない。しかも、この(中間的な)レベルにおいてさえ厳密な計算はあまりに膨大である。したがって、原子核の位置は固定されたものと見なすこと、電子間の相関もまともに取り扱うかわりに各電子がある有効ポテンシャル中を独立に運動するものと仮定することなどの近似が通常用いられる。このような近似を効率よく適用するための理論として密度汎関数理論(density functional theory)と呼ばれる理論がある。