相対論では、運動する物体上で進行する時間を固有時という。固有時は運動をみている座標系の時間と比べてゆっくり進む。運動体が光速度(秒速約29万9792km)に近づくにつれ、固有時の進み方は無限にゆっくりになっていく。この効果は、崩壊する素粒子の寿命が高速度になるにつれて長くなることによって確かめられている。また、この効果は次のような双子のパラドックス(twin paradox)を引き起こす。それによると、双子の一人が光速に近い速度で宇宙旅行に出て地球に戻ってくると、地球に残っていたもう一人に比べて年齢(固有時での経過時間)が若くなると予言される。さらに、重力の弱いところでは固有時が速く進む。たとえば、高い山の上では地表よりも重力が弱いので、固有時の進行が速くなる。したがって、飛行中の飛行機の中にある時計は、速度と重力の両方の影響によって地上の時計とずれが生じてくる。実験によって測定されたこのずれは、飛行時間30時間で1000万分の1秒程度であった。