イオン性の物質で、常温で液体であるものをイオン液体という。エチルメチルイミダゾリウム(CH3CH2-NC3H3N+-CH3)とテトラフルオロボロン(BF4-)の塩は融点が15 ℃であり、その一例である。
Na+イオンとCl-イオンとからできている塩化ナトリウムは、融点(800 ℃)以上ではイオン性の液体であるが、室温では固体である。塩化ナトリウムの融点が高いのは、イオン結合の力が強いからである。陽イオンと陰イオンとの結合のエネルギーはおおよそイオン間の距離に反比例するので、陽イオンや陰イオンが大きくなるとイオン結合のエネルギーも小さくなり、融点が低くなる傾向がある。イオン液体になる条件はいろいろあるようであるが、イオンの大きさも一つの要因である。イオン液体はEMI+とBF-との塩のようにかさ高い有機物の陽イオンとCF3SO3-や(CF3SO2)2N-などのかさ高い陰イオンからできている。
イオン液体の特徴には不揮発性、不燃性、熱安定性、高イオン性などがある。これらのすぐれた性質を生かしていろいろな応用が考えられており、特にイオン伝導体としてのリチウム電池、燃料電池、太陽電池への展開が注目されている。また、最近、イオン液体ゲルが注目されていて、これはイオン液体を網目状高分子に加え内部を膨潤させたもので、大きな体積変化(10倍程度)をともなう相転移現象を示す。