生体をつくる物質のうち、長鎖(高炭素数)脂肪酸あるいは長い炭化水素の鎖をもつ分子で、水には溶けにくいがベンゼン、エーテルなどの有機溶媒には溶けやすい成分。多種多様の化合物の中でも油脂とリン脂質が特に重要。油脂(oil ; fat)はグリセリンと長鎖脂肪酸3分子とのエステルでトリグリセリド(triglyceride)と呼ばれ、生体内に蓄えられる貯蔵脂肪の主成分である。常温で固体のものをとくに油脂(fat)といい、飽和脂肪酸が多く含まれる。常温で液体の脂質を脂肪油または脂油 (fatty oil)といい、不飽和脂肪酸が多く含まれるが、脂肪と本質的な差はない。
また、分子内に他の物質を含む脂質を複合脂質 (conjugated lipid)という。リン酸エステルをもつリン脂質(phospholipids)は脳、肝臓、腎臓の細胞膜など生体膜の重要成分で、膜を通すイオン輸送などに関与する。