分子の間に働く弱い力(水素結合、静電相互作用、電荷移動相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用等)によってできる二つ以上の分子の集合体が、分子単独の場合には見られない機能を発現する場合、その集合体を超分子(supramolecule)と呼ぶ。酵素やイオノフォア(ionophore イオン、例えばラジウムイオンを選択的に捕捉する物質)などの機能性分子は超分子であり、またグルコース(ブドウ糖)数個が環をつくったシクロデキストリン(cyclodextrin)もよく知られている。近年、人工超分子の研究が活発化しており、特にその分野を超分子化学ということが多い。例えば、王冠状の分子構造をもつクラウンエーテル(crown ether)は、アルカリ金属イオンの選択的捕捉、アミノ酸の光学異性体の分割などを行う。陰イオンを捕捉するクリプタンド(cryptand)や、複数個のフェノール単位をもつカリックスアレーン(calixarene)などの環状化合物もある。最近では、C60やカーボンナノチューブ関連の超分子化学の研究が特に活発である。