大きさが1nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)のスケールで、機械のような動作をする分子は分子機械(molecular machine)と呼ばれ、ナノテクノロジーの目標でもある。分子機械に期待される機能の一つは分子スイッチング(molecular switching 分子構造を変化させる物理的、あるいは化学的な“トリガー”すなわち引き金)であり、光、酸化還元、電子、力などを利用するさまざまなトリガーが工夫されている。光スイッチの最も有力な候補は、光によってシス・トランス異性化するアゾベンゼンである。アゾベンゼンに適当な側鎖を導入すれば、シス型(cis form 同じ原子、あるいは原子団が、炭素の二重結合C=Cの同じ側にあるもの)では側鎖で目的化合物を挟み、トランス型(trans form 同じ原子、あるいは原子団がC=Cの斜め反対側にあるもの)ではそれを放出する分子ピンセットが実現する。