主に炭素原子60個がサッカーボール状に結合してできた炭素のクラスター「C60」をいう。12個の五員環と20個の六員環からなり、それぞれの五員環には5個の六員環が隣接している。圧力約50~600Torr(1Torr=1/760気圧)のヘリウム雰囲気中で黒鉛を電極にしてアーク放電を行い、生成したすすの有機溶媒(ベンゼン、トルエンなど)抽出で得られ、そのときにラグビーボール形のC70や、少量ではあるがよりサイズの大きいC76、C78、C82、C90、C94、C96などの高次フラーレン(higher order fullerene)も生成する。フラーレン(C60)を原料にして、これが二つつながった形の二量体(C120)やフラーレンポリマー(-C60-)nも合成、フラーレンナノウィスカー(fullerene nano whisker)という繊維状の結晶も注目されている。一方、アルカリ金属を導入したフラーレンが従来の有機物超伝導体よりも高い温度で超伝導性を示したことから金属フラーレン(metallofullerene)も注目された。また、C60には直径0.4nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)の空間があり、高次フラーレンではより大きな空間があるため金属内包フラーレン(metal-containing fullerene)ができる。これは金属原子を混合した黒鉛を電極にしてアーク放電したときなどに生成する。140La@C82(140Laを内包するC82)のような放射性の金属フラーレンは放射性標識に利用できる。段階的化学反応で分子構造を操作する分子手術法(molecule surgery method)により水素内包フラーレンもつくられた。また、フラーレンの化学修飾がさかんに行われ、カルボン酸を付けた水溶性フラーレン(soluble fullerene)やDNAなどの生体高分子を結合させたフラーレンがつくられ、制がん作用などの生理活性が注目されている。さらに、アルキル鎖を結合させてさまざまな形状のフラーレンの集合体をつくり、新しい物性材料としてナノ配線や燃料電池素材への応用が期待されている。