使い捨てカイロの原理は簡単で、鉄の細粉を酸化し、その際に生じる燃焼熱を利用している。使い捨てカイロの場合、生じた酸化鉄はいわば灰として捨てられるわけだが、木材などを燃やしたときと違って、この灰は原理的には化学的方法で元に戻すことができる。具体的には酸化鉄を還元して鉄にもどせばよい。これがケミカルループ燃焼の基本原理で、すでに1980年代に日本の科学者によって提案されていたが、これを工業的規模で実施するにはさまざまな工夫がいる。現在考えられている計画では、酸化剤としては空気、還元剤としては天然ガスを用いる。鉄粉を、酸化を行う「酸化塔」と還元を行う「還元塔」とを往復させることで、1000℃程度の熱の取り出しが可能とされる。酸化段階で窒素酸化物(NOx)が生じないような条件を設定すれば、生成物は還元段階で生じる二酸化炭素と水だけであり、クリーンな燃焼システムが得られる。東京ガスが研究に着手したが、実用化までにはかなりの時間が必要であろう。すでにヨーロッパでは石炭を還元剤としてパイロットプラント段階にまで開発が進んでいる。