アモルファスは原子や分子が不規則な構造で結合した固体で、非晶質ともいう。構造を詳しく見ると、結晶のような長距離にわたる秩序はない。しかし、完全な無秩序状態ではなく、近くの原子、分子の間には短距離秩序があり、電子線回折像には太陽の暈(かさ)のようなハローパターンが見られる。
代表例はガラスである。ガラスは溶融されたケイ酸塩を冷却したとき、液体の構造がそのまま凍結されたもので、ケイ素を中心に4個の酸素が配位した「SiO4」の四面体が無秩序に連なった構造をしている。ガラス状態は準安定相であり、結晶が固体の安定相である。高分子も準安定状態で凍結されやすいので、アモルファス構造をとることが多い。
硫黄(S)やセレン(Se)など「カルコゲン元素(周期表で第16族に属する元素)」のアモルファスをカルコゲンガラス(chalcogens glass)、その化合物のガラスをカルコゲナイドガラス(chalcogenide glass)という。アモルファス-セレンはコピー機の感光ドラムに1950年代の初めから利用され、その後、カルコゲナイドガラスはテレビの撮像管などに使われた。
金属は規則的な構造を取りやすいので、液体状態から冷却するとガラス状態で凍結されることなく結晶化してしまう。しかし、金属液体の超急冷法が開発され、合金系で金属ガラス(metallic glass)が作られるようになった。金属ガラスは均質で、強靱(きょうじん)性、耐食性に優れているなどの特性がある。鉄(Fe)やコバルト(Co)の強磁性アモルファス合金は、ヒステリシス損失(Histeresis loss 鉄心の磁区が外部の磁界の増減を受けて自らの磁界の向きを変えるときのエネルギー損失)が小さく、トランスの鉄芯に適している。
アモルファスは、液体の急冷以外に、加熱などで気化させた物質を冷たい基板上に蒸着する方法でも作られている。太陽電池で使われているアモルファスシリコンは、シラン(SiH4)の分解で生成したケイ素原子の蒸着で製造されている。この方法には化学反応が関わっているので、化学蒸着法(CVD ; chemical vapor deposition)と呼ばれている。