現在のグローバリゼーション(globalization)は、政治と経済の地球規模での共同管理(→コスモポリス)である。そのなかで国家の主権は制約されるし、自分たちのことは自分で決めるという伝統的な安心感が消滅するのは事実であり、それがナショナリズムを新たに覚醒させている。現在のナショナリズムは、かつての興隆する国家と連帯したものではなく、衰退する国民国家の時代における「民族」へのノスタルジーに近い。衰退する自民族中心主義(ethnocentrism)は極右運動のなかに叫び声をあげる。
現在のナショナリズムは、グローバリゼーションへの後ろ向きの抵抗と抗議である。グローバリゼーションとナショナリズムは同じ現実の表と裏であり、地球規模の共同管理が国家連合や連邦の形式で前進するたびに、地方主義的なナショナリズムが呼び起こされ続けるだろう。地方主義は愛国心や郷土愛の形式をとり、国際的な人間移動によって流入する外国人への排斥もまた激化する。全世界の等質化傾向のなかで、それへの反逆の形式の下で、民族主義や人種差別という古い衣装がもちだされる。しかしグローバリゼーションの強烈な前進を前にして、古い衣装は、所詮、一個の風俗と化すだろう。