現在世代と過去世代・未来世代とのあいだに成立するとされる倫理。社会保障や国家財政の問題においても世代間倫理が問題になるが、今日ではとりわけ地球環境問題との関連で未来世代に対する世代間倫理が注目されている。エネルギー資源の枯渇、核廃棄物などの地球環境問題においては、現在世代の活動が未来世代に対する危害となるような関係が成立する。したがって環境倫理学によれば、現在世代には未来世代の生存を保証したり、その利益を配慮したりする責任や義務がある。近代的倫理観では倫理が現在世代内での相互的な取り決めであると考えられる傾向があるから、世代間倫理のこのような発想は近代的倫理観には収まらない射程をもっている。
しかし、世代間倫理の場合、倫理の取り決めの当事者である未来世代が存在しないため、未来世代への義務や責任が本当に成立するのかという難問が生じる。この難問への解答としては、たとえばヨナス(Hans Jonas 1903~93)が挙げられる。ヨナスによれば、親には乳飲み子に対する一方的な責任が生じるのとおなじように、現在世代には未来世代に対する生存の責任が生じるとされる。あるいは、シュレーダー=フレチェット(K.Shrader-Frechette 不詳)編『環境の倫理』によれば、現在世代は過去世代が自分たちのためにしてくれたことに対して恩を返すことができないという負債をもつが、この負債の代償として、現在世代には、過去世代がしたのとおなじように未来世代に対して振る舞う義務が生じるとされる。