不可分な実体である原子によって世界が構成されていると考える立場。個に対する全体の優越性を認めるホーリズム(全体論 wholism)に対して、アトミズムは全体よりも個が実体であると考える。原子(アトム atom)とは、「不可分なもの」を意味するギリシャ語のアトモン(atomon)に由来する。
古代ギリシャの自然哲学では、レウキッポス(Leukippos 紀元前435頃)が初めて提唱したとされる。レウキッポスとその弟子のデモクリトス(Dmokritos 紀元前420頃)によれば、原子とはそれ以上分割できない不生不滅の実体であり、無数の原子が空虚の中を運動することで結合・分離し、あらゆる現象が生じる。両者の原子論が機械論的であるのに対して、それを引き継いだエピクロス(Epikouros 紀元前341頃~前270)は、原子の落下運動に逸(そ)れがあることで、偶然性が生じると主張した。
ルネサンス以降では、フランスの哲学者ガッサンディ(Pierre Gassendi 1592~1655)がエピクロス主義を復興し、原子論とキリスト教の融合を試みた。その影響により、原子論が近代科学に取り込まれることになった。特に、イギリスの自然哲学者ドルトン(John Dalton 1766~1844)は、化学に原子論を導入し、近代化学の父と呼ばれる。
また、社会において共同体よりも個人の権利を最優先する立場を「社会的アトミズム」と呼び、17世紀啓蒙思想の社会契約説や現代のリベラリズム(liberalism)がこれに当たる。これに対して、共同体の価値や善を重視する立場をコミュニタリアニズム(communitarianism 共同体主義)と呼ぶ。