コーランと呼ばれたが、正しくはクルアーンという。アラビア語で「読誦(どくしょう)されるべきもの」の意で、イスラームの根本聖典。ムハンマドが610年から632年の死までの22年間、アッラー(唯一の絶対神)から受けた啓示、戒律・祭儀に関する規定、説教などを集めたもので、散文詩体の114章(6211句)からなる。信徒の守るべき六つの信仰対象と五つの義務(六信五行)が記されている。
六信とはまず第一に唯一の神・創造者アッラーへの信仰、ついで天使、啓典、預言者ムハンマド、来世、予定を信じること。五行とは信仰告白、メッカ(Mecca もしくはマッカMakkah サウジアラビアにある預言者ムハンマドの生誕の地=聖地)を仰ぐ礼拝(1日に5回)、喜捨、断食(イスラーム暦第9月のラマダーン月に行う)、メッカ巡礼を行うことで、この他に特にジハード(聖戦)があり、その戦死者は殉教者として天国が約束されている。
ムハンマド像については「右手に剣、左手にクルアーン(コーラン)」とジハードからイメージされてきたが、これは西洋的な偏見による。異教徒の中で偶像崇拝者や多神教徒は改宗するまでジハードの対象になるが、実際にはキリスト教徒やユダヤ教徒ばかりでなく、仏教徒も政治的服従を条件に信仰の保持は保障されている。