6世紀末、アラビア半島のマッカ(メッカ)で生まれ育った預言者ムハンマド(マホメット 570頃~632)が創始した世界宗教。イスラームとは「唯一の神アッラーに絶対的に帰依すること」を意味し、信者は「絶対的に帰依する者」の意であるムスリム(モスリムイスラム教徒、神を信ずる者)と呼ばれる。ムハンマドは40歳(610年)頃、マッカ郊外の洞窟で瞑想し、創造主である唯一神アッラーの啓示を受け、神の使徒・預言者としての自覚を抱き、最後の審判の日に備えるように警告を発した。死の時まで続いた神の啓示をまとめた書物がクルアーン(コーラン)である。偶像崇拝を否定したため、激しい迫害を受けたムハンマドは70余人の信徒を引き連れてマディーナ(メディナ)に移住した。これをヒジュラ( Hijra 聖遷)といい、この年をもってイスラーム(ヒジュラ)暦の元年とする。
マディーナを拠点として政治・宗教的なイスラーム共同体を建設していくとともに、マッカの勢力と戦い続けて、630年に打ち破り、マッカのカーバ神殿の偶像を破壊してアッラーの聖所とした。アラビア半島中西部にムハンマドの影響力は及んでいったが、632年に病身をおしてマッカ巡礼を行い、マディーナに帰って間もなく没した。ムハンマドの死後、カリフ(ムハンマドの代理者・後継者)たちは8世紀には中央アジア、西北インド、北アフリカ、イベリア半島を征服して広大なイスラーム圏を形成していった。カリフの選定を認める者たちがスンニー派を形成して多数派となり、否認する者たちからシーア派などの分派が生まれた。現在、ムスリムの9割はスンニー派に属し、シーア派は1割程度でイランに勢力をもつ。