チベットを中心にして中国西北辺や東北部、内外モンゴルに広まった密教系の仏教。ラマ教ともいう。ゲルク派、カギュー派、サキャ派、ニンマ派の四大宗派がある。ゲルク派のダライ・ラマは16世紀以降、チベットのラサに君臨してきた宗主であり、観音菩薩の化身が転生した生き仏、転生活仏として信じられている。その代替わりには、この地方の新生児のうちから特別の瑞相(ずいそう)をもった者が秘儀を通じて選ばれる。現在のダライ・ラマ14世は、1959年のチベット動乱以降、中国政府と対立して、インドに亡命政権を樹立して自治を要求している。
カギュー派の転生活仏カルマパ17世は、2000年1月の厳寒期にヒマラヤを越えてインドに出国し、ダライ・ラマの亡命政権のもとに留まっている。ゲルク派の阿弥陀如来の生まれ変わりとされ、ダライ・ラマに次ぐ地位にある転生活仏パンチェン・ラマ11世を1995年にダライ・ラマと中国政府が別々に選定して、併存した状態が続いている。中国政府はダライ・ラマの認定した少年を無効として監禁下に置き、政府認定の子供を国内の仏教聖地、五台山などを歴訪させたり、北京のチベット仏教寺院・雍和宮で活仏30人の拝礼を受けさせたり、モンゴルの仏教代表団と接見させたりして、パンチェン・ラマとしての正統性を確立しようとしている。