中世ヨーロッパで勢力を持ったキリスト教の異端派であり、ドイツからフランス、イタリアへと広まった。フランスのカタリ派はアルビジョア派ともいう。カタリとは清浄を意味し、極めて禁欲的な戒律を堅持したため、この名で呼ばれた。マニ教などグノーシス主義の影響を強く受け、善神と悪神、善神の世界と悪神の世界が対立する二神・二世界の二元論を基本とし、現実世界、すなわち人間の肉体も含めたすべての物質的存在は、悪神に属するものとする。ローマ教会を悪魔の教会として攻撃し、旧約聖書は悪の世界の創造者である悪神の書として排撃。独自の教団を組織し、その信者となり、戒律を守れば、霊魂は悪神の世界から解放されて、天上界に復帰できるとされた。肉食や殺生、性交、婚姻、所有などの一切の世俗生活を否定し、断食して苦行を実行し、禁欲生活を旨とした。やがて12世紀半ばには、王権や法王庁の介入を嫌う地元の領主や司教らの保護もあり、アルビジョアなどの南フランスに一定の勢力を持つようになった。そこで1209年、法王イノケンティウス3世の呼びかけにより、カタリ派を殲滅(せんめつ)するためのアルビジョア十字軍が派遣され、地元諸侯や住民らとの20年に及ぶ攻防のすえ、当地を制圧した。十字軍が終結すると、今度は異端審問制度が創設されるなど、カタリ派は徹底して弾圧され、14世紀中ごろに根絶されたとされる。