サンスクリット語のムドラーの訳。仏(ほとけ)・菩薩(ぼさつ)・明王(みょうおう)などの誓願・功徳(くどく)・働き・悟りを象徴的に身振りなどで表現したものを言うが、狭義には手指の組み合わせによって示した印(手印)を指す。基本的な印相は釈迦のある特定の行為に由来する。説法は説法印(せっぽういん;転法輪印[てんぽうりんいん]とも言う)、瞑想は定印(じょういん;禅定印[ぜんじょういん]とも言う)、悪魔の退散・降伏(こうぶく)は降魔印(ごうまいん、触地印[しょくちいん]とも言う)。これら三印に、望みをかなえる与願印(よがんいん)、恐れを除く施無畏印(せむいいん)を合わせて、根本五印(釈迦五印)とする。また阿弥陀如来では、極楽往生の9つの段階を上品上生(じょうぼんじょうしょう)から下品下生(げぼんげしょう)まで9つの印相で表す九品印(くほんいん)がある。密教では仏・菩薩などに特定の手印を配当し、手印を結び、真言を唱えて、本尊の観想を行い、本尊との同一化を達成する修行が重視され、数多くの手印が生み出された。密教の主尊・大日如来には、金剛界(→「曼荼羅」)の智挙印(ちけんいん)と胎蔵界(→「曼荼羅」)の法界定印(ほうかいじょういん)がある。