皇室の宮中三殿や神嘉殿(しんかでん)における神道祭祀(さいし)を言い、主に天皇が祭主となる。宮中三殿とは、皇居吹上御苑(ふきあげぎょえん)の東南にある三つの神殿、すなわち賢所(かしこどころ)、皇霊殿(こうれいでん)、神殿のことである。賢所は明治維新の東京奠都(てんと)にともない、1869年に設けられ、三種の神器の一つであり天照大神(あまてらすおおみかみ)のご神体とされる神鏡が祀(まつ)られた。これは伊勢神宮・内宮(ないくう)奥に安置されているとされる神鏡・八咫鏡(やたのかがみ)を模造したもので、神宮と賢所は一体であるとされた。皇霊殿は歴代の天皇や皇后などの皇霊を祀り、神殿は、高天原(たかまがはら)からこの世に天下った天津神(あまつかみ)と、もともとこの国にいる国津神(くにつかみ)、すなわち天神地祇(てんじんちぎ)を祀る。また、神嘉殿は新嘗祭(にいなめさい)を執行するための神殿である。新嘗祭(11月23~24日)とは、その年の収穫を神に感謝する祭で、1927年に改正された皇室祭祀令により、天皇の親祭する大祭とされた。他の天皇親祭には、皇位の始まりを寿(ことほ)ぐ元始祭(1月3日)、皇祖神武天皇即位を祝う紀元節祭(2月11日)、春分の日と秋分の日に歴代天皇や主な皇族などの霊を祀る皇霊祭、同じく春秋二季に行われ、天神地祇や天皇の守護神とされる八柱の神を祀る神殿祭、神武天皇崩御の日にその天皇霊を祀る神武天皇祭(4月3日)、その年に採れた新しい米を伊勢神宮に奉納する神嘗祭(かんなめさい、10月17日)がある。戦前、天皇の祭祀である皇室神道は国家祭祀として、伊勢神宮を頂点とする神社神道(→「神道」)とともに、国家神道の重要な位置を占めていた。戦後は政教分離によって、皇室の私的な祭祀・宗教となっている。