通常の日常的な意識・精神状態の変容した状態。全能感や多幸感、強烈な快感などを伴うこともある。エクスタシー(ecstasy)、変性意識状態(altered states of consciousness)などとも呼び、恍惚、忘我、脱魂、法悦、入神、神がかりなどと訳される。非意図的・非自発的にも、意図的・自発的にも発生し、しばしば常軌を逸した言動を伴う。前者は心身の危機的な状態において、自然発生的に起こる。たとえば、高熱を発したり、全身が衰弱したりする病気になった際や、パニック障害・ストレス障害などの意識障害により、幻覚・錯覚・不安・興奮等の譫妄状態(せんもうじょうたい)に陥る場合がそれで、多くはコントロール不能である。後者は、様々な技法を用いて人為的に起こすもので、古代からその技法が開発されてきた。例えば興奮性を引き起こす薬物、心身を厳しく過酷に鍛錬する修行などの宗教的な儀礼・実践、あるいは歌舞音曲などの芸能、催眠・瞑想などを通じた意識の消失・狭窄等により発生し、おおむねコントロールがなされている。いずれも世界各地に見られる文化的・宗教的現象であり、その状態に関する多様な解釈と評価が行われているが、前者のトランスは異常なものとみなされてマイナスの評価を受け、後者は精霊や神・仏などの超自然的存在によるものとされ、プラスの評価を受けることが多い。後者の典型が、精霊や神霊を招いて宗教的な儀礼を行うシャーマン(→「シャーマニズム」)である。