これまで雑誌や本などの紙媒体でのみ認められてきた出版権を、ネット配信やCD-ROMなどの電子出版にも認めようというもの。出版権とは、著作権者(著作者または著作権継承者)が契約等により認めた出版者だけが、排他的にその著作物を複製・頒布できる権利。従来の著作権法では、雑誌や書籍等の紙媒体を対象とし、電子書籍は想定していなかった。しかし、電子出版が盛んになるにつれて、海賊版や「自炊」(→「自炊論争」)など、著作権者の権利を侵すような現象も頻出するようになったが、これに対処できるのは、著作権者本人だけだった。そこで出版社などを中心とする業界側では、電子出版権を創設し、著作権者に代わって海賊版や違法な自炊行為などの防止や差し止め請求ができるよう、法改正を望んでいた。2014年4月25日、参議院本会議で改正著作権法が可決成立し、電子書籍における出版社の権利に一定の法的根拠が与えられた。なお、出版業界では電子出版権とともに、音楽や映画などにおける実演家(俳優、演奏者、歌手、舞踊家、演出家など)やレコード製作者、放送事業者などに認められている著作隣接権や、その一部として出版者が行った独自の編集・レイアウト等を守る版面権(はんめんけん)の取得も望んできたが、こちらは新規参入を図る経団連等の他業界による根強い反対もあり、今回は認められなかった。