2017年10月22日、アメリカの通信大手AT&Tが同メディア大手タイムワーナーを854億ドル(約9兆7200億円)で買収すると発表。携帯電話事業が伸び悩む中、映画、テレビ、ニュースまで幅広いコンテンツを持つワーナーを取り込んで複合メディアへの転換を狙ってのこと。しかし同年11月に司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反だとして提訴。認可の条件として傘下のCNN売却などを要求したが、ワーナー側はこれを拒否。決着がつくには時間がかかりそうだ。一説には、CNNを敵視するドナルド・トランプ大統領の意向が働いたともいう。また、同年12月14日には、6大メジャー映画スタジオの一つ21世紀フォックスを同業のディズニーが524億ドルで買収すると発表した。買収総額はフォックスの負債137億ドルの引き受けも含め660億ドル(約7兆4000億円)とされる。20世紀映画とフォックス・フィルムが1934年に合併して「20世紀フォックス」が誕生。85年にメディア王として知られるルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーション傘下となった。2013年、ニューズ・コーポレーションは映画、テレビ部門を手掛ける21世紀フォックスを分社化したが、「20世紀フォックス」の社名は傘下の製作会社として残された。アメリカではネット配信の普及に伴って劇場映画とそれに付随するビジネスに陰りが出ており、ニューズ・コーポレーションは保守的論調で知られるフォックスTVやスポーツ番組に集中する意向。この合併が実現すると全米興行収入の3分の1をディズニーが占めることになるので、こちらも独禁法に違反しないかの裁定待ちになるが、「トランプ大統領は歓迎し、マードックに祝福の電話をした」とホワイトハウスの報道官は発表している。近年、ディズニーはマーベル・スタジオやルーカスフィルムを買収するなど(→「ディズニー/ルーカスフィルム」)、積極的に拡大方針をとっており、実現すればディズニーはフォックスの映画製作部門、有料テレビ放送網の一部を入手した上で、「Xメン」「アバター」「ザ・シンプソンズ」といった人気コンテンツも加わることになる。21世紀フォックス傘下には動画配信サービスのHuluもあるため、競合するネットフリックス(→「インターネット映画配信」)への作品提供も18年末で終了。19年に計画している新ネット配信事業(ネットフリックスよりも安価で提供)の柱に、ディズニーとフォックス作品を据えることができる。また同じく19年にはカリフォルニアとフロリダの2カ所で「スターウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」(通称“スター・ウォーズ・ランド”)の開園も予定されており、メディア産業の最大手となるディズニーの動向が注目されている。