19世紀オーストリア・ハンガリー帝国の美貌(びぼう)の皇后として知られ、1898年に暗殺されたエリザベートの生涯を独自の視点で描いたミュージカル。ブリギッテ・ハーマンの評伝をもとに、脚本・歌詞ミヒャエル・クンツェ、音楽シルヴェスター・リーバイにより1992年にウィーンで初演。暗殺者ルキーニを狂言回しに、「死」を擬人化した登場人物トート、エリザベートと夫の皇帝フランツ・ヨーゼフという三者の葛藤(かっとう)を軸に、愛と運命、歴史を大胆に描いた華麗でスケールの大きな作品である。日本では96年に宝塚歌劇団雪組が上演、一部演出を変更してトートとエリザベートの愛に焦点を当て、主演男役の魅力を最大限に発揮させて成功、代表的演目として全5組で上演され、さらに2007年には再び雪組で、09年には月組、宝塚歌劇100周年の14年には花組と上演を重ね、初演より20周年を記念して16年には宙組で上演される。一方、東宝では同じく小池修一郎の演出のもと、男女キャストによりウィーン版に近い形でたびたび上演されている。宝塚歌劇団で日本初のエリザベートを演じた花總まり(1973~)は、15年に帝国劇場で再びこの役を演じるなど、今日のミュージカルを代表する女優の一人となっている。