漫画・アニメーションなど「2次元」のメディアで作られた作品をもとに制作されたミュージカル。2010年代以降流布するようになった用語で、現在では舞台芸術の一ジャンルとして認知されるとともに、演劇学やメディア学などの研究対象としても注目されるようになった。「2次元」媒体によって創作されたキャラクターを立体化するという行為には、広い意味では、いわゆるコスプレやフィギュアも含まれるし、宝塚歌劇団では1974年初演の「ベルサイユのばら」を始め漫画を原作とした作品を多数上演しており、「逆転裁判」などゲームソフトに基づく舞台も珍しくなくなった。また、2.5次元のストレートプレイも考えられる。しかし、ここでいう「2.5次元ミュージカル」とは、91年の「聖闘士星矢」、93年の「美少女戦士セーラームーン」あたりに始まり、2003年から現在に至るまで連続して上演されている「ミュージカル・テニスの王子様」で決定的となった流れの上に位置するといっていいだろう。そこに見られるのは、キャストのオーディションからトレーニング、舞台美術・演出に至るまでの徹底したイメージ管理によって、2次元の絵が俳優の肉体によって具体化されたことを実感する「2.5次元感」、その肉体の発散する魅力、テニスの美技を舞台上にいかに再現するかといったアイデアとテクノロジーの活用、歌と踊りを駆使した総合芸術としてのミュージカルの力、そして出演者の成長を見守ることも含めた舞台と客席の一体感であろう。14年には、業界の交流センターとして一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会が設立され、人材育成・作品のクオリティー向上に取り組むとともに、世界への発信も目指している。