写実をモットーとした絵画が注目され始めて数年がたち、流行と言ってもいいぐらいに人気がある。2010年には、千葉市に現代日本の写実絵画だけを集めたホキ美術館が開館した。日本では、1990年代にスペインの画家アントニオ・ロペス・ガルシア(Antonio Lopez Garcia 1936~)の写実絵画が紹介され、そのリアリズムに驚嘆の目が向けられた。その後、日本でも写実にこだわる絵画を描く画家が多数現れ、新たな写実絵画ブームが生まれた。その写実画家のひとりに大阪府出身の磯江毅(スペイン名グスタボ・イソエ 1954~2007)がいる。1974年、スペインにわたり、そこでマドリード・リアリズムの巨匠アントニオ・ロペス・ガルシアに写実絵画を学び、着実に成果を上げ、俊英画家として高く評価されていった。彼の写実絵画は、真摯(しんし)なリアリズムの追求から、生命の神秘を生み出す表現にたどり着いたということがうかがえる。2007年夏、日本に帰国したがそのまま体調を崩し死去。53歳だった。10年に作品集が刊行され、11年には練馬区立美術館と奈良県立美術館で回顧展「磯江毅=グスタボ・イソエ~マドリード・リアリズムの異才~」が開催された。