葛飾北斎(1760~1849)は、江戸後期に活躍した浮世絵師。勝川春章(かつかわしゅんしょう 1726?~92?)に入門し、春朗(しゅんろう)の雅号で役者絵や戯作挿絵を描く。それに飽き足らず、やまと絵の狩野派や琳派、土佐派の画風を学んだばかりか、その意欲は西洋画にまで及び、陰影法を取り入れた洋風風景画も制作した。さらに初編が1814年に刊行された絵本の傑作「北斎漫画」は、出版されるやいなや世間にその名をとどろかせた。北斎の絵は、19世紀末にはヨーロッパに伝えられ、エドガー・ドガ(1834~1917)やフィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90)など多くの画家に、浮世絵の持つ独特の空間表現や構図法を通して影響を与えた。また、31年ころから発表された「冨嶽三十六景」は彼の芸術を不動のものにした。雅号には、ほかに宗理(そうり)、辰政(ときまさ)、画狂老人卍(まんじ)なども使用した。北斎漫画初編出版200周年の2014年から翌15年にかけて、上野の森美術館、パリのグラン・パレ・ナショナル・ギャラリー、福岡アジア美術館などで北斎展が開催された。また、16年11月22日には、100年以上行方不明だった北斎の肉筆画「隅田川両岸景色図巻」(1805)を約1億4900万円で購入して話題になったすみだ北斎美術館(東京都墨田区)が、オープンしている。なお、翌17年にはイギリスの大英博物館と大阪のあべのハルカス美術館の国際共同プロジェクトによる大規模な北斎展(5~8月が大英博物館で「Hokusai : beyond the Great Wave(北斎-大波の彼方へ-)」、10~11月があべのハルカスで「北斎-富士を超えて-」)が開催される予定である。