建築家の大野秀敏(おおのひでとし)が提唱した、縮小する都市のためのデザイン戦略。機能的なゾーニングによる「面」ではなく、織物のような冗長性をもつ「線分」として都市をとらえる。人口増加時代の丹下健三の「東京計画1960」に対し、2050年の東京に向けた「ファイバーシティ」は、人口減少時代の都市計画である。大野は、全体を統括するマスタープランがなく、断片的な計画しかない東京の特性を肯定的にとらえ、以下の方針を提案した。駅周辺に郊外住宅を集中させてコンパクトな都市のネットワークを形成すること、木造密集市街地を緑の防火壁で小さく分割すること、首都高速道路の一部を緑道に用途転換させること、そして線的な要素によって均質な都市のなかに場所性の強い皺(しわ)をつくることである。