2008年の北京オリンピックのメーンスタジアムの通称であり、世界的に活躍するスイスの建築家ユニットヘルツォーク&ド・ムーロンによって設計された。彼らは、バーゼルのシグナルボックスなど、シンプルな形態に独特な皮膜を用いる作風で注目を集め、海外ではワールドカップの舞台となったミュンヘンのアリアンツ・アレナ(05年)、プラダ・ブティック青山店(03年)など、造形のレベルでも新しい展開をしている。鳥の巣は、24本の大きな門型のフレームをずらしながら並べる基本構造をもちながら、さらに網の目のように絡みあう過剰な鉄骨が装飾的な機能を果たし、一目見たら忘れられないシンボル性を獲得した。中国の勢い、アルゴリズムのデザイン手法、そして建築家の軌跡におけるひとつのピークが奇跡的に重なり、新しい21世紀のランドマークが誕生した。鳥の巣は、全世界へのテレビ中継によって、一夜にして数十億人が、その印象的なデザインを記憶に刻むという幸福な船出となった。