ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展にあわせて、2009年6月にオープンした安藤忠雄(1941~)の設計による現代アートの美術館。ただし、新築ではなく、古建築のリノベーションである。海を挟んで、ヴェネチアのサンマルコ広場のはす向かいに位置する税関を修復・保存しているために、外観に新しいデザインはない。一方、内部は、本来の倉庫的な空間を生かしつつ、床を増やしたり、スロープや階段を入れて、美術館の仕様に変えている。とくに中心部には、安藤が得意とする、2層分の高さで打ち放しコンクリートによる矩形(くけい)の壁が挿入され、新旧の鮮やかな対比を示す。また2階は、展示室ながら、ところどころに開口部をもうけ、ヴェネチアの眺めを楽しめるようになっている。プンタ・デラ・ドガーナは、アート作品だけに閉じるのではなく、積極的にまわりの風景をとりこむ美術館である。