2000年代に入り、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは、建設ラッシュが生じた。そこでは伝統や場所性を表現するよりも、建築自体が新しい場所の記号となるアイコン建築と呼ばれる奇抜な形態が目立つ。ノーマン・フォスター(1935~)やザハ・ハディド(1950~)ら世界的に有名な建築家も参加し、数多くの実験的なデザインを提案している。08年のリーマン・ショックと09年のドバイ・ショックという2つの経済危機から、こうした建設熱は若干の沈静化を見せ、延期や中止となったプロジェクトもある一方、今後竣工を迎えるものも多く、まだ目が離せない。10年には、全高828メートル、世界一高い超高層ビルが完成した。ヒメノカリスという砂漠の花が形態のモチーフになっている。アメリカの大手組織設計事務所SOM(スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル Skidmore, Owings & Merrill)が設計を手がけた。落成の際、ドバイ・ショックによる資金難を援助したUAE第2代大統領にちなみ、名称はブルジュ・ハリファとされた。