2010年、パリの文化施設ポンピドゥーセンター(1977年)の初の分館がフランスのメス市で完成した。設計は、03年の国際コンペで勝利した坂茂(1957~)とジャン・デ・ガスティン(Jean de Gastines 1957~)である。全体を覆う六角形の水平投影面をもつ大屋根は、木をメッシュ状に編んだ構造だが、CNC(コンピューター数値制御)の工作機械によって、多方向に湾曲した形状や開口部を獲得し、複雑な施工を可能にした。坂は竹の編細工から着想を得たという。ちなみに、六角形はフランスの国土のかたちに近く、フランスのシンボルでもある。大屋根の下では、15メートル×90メートルの羊羹(ようかん)型の3本のギャラリー・チューブが交差しながら挿入され、それぞれに街のランドマークを向く。一般人にも認知されやすい、ぐにゃぐにゃした屋根のシルエットでありながら、機能的な箱としての展示室を合わせもつ美術館である。