2012年、東京都墨田区押上に、世界一高い自立式電波塔として完成。このプロジェクトでは塔だけではなく、商業施設の東京ソラマチやオフィス棟を含む東京スカイツリータウンも同時に開発されている。設計は日建設計、施工は大林組が担当。高さ634メートルは、東京を含む旧国名の武蔵(ムサシ)に語呂を合わせて設定された。全体のかたちは、日本建築の屋根などにあらわれる曲線「むくり」や「そり」をイメージしている。藍白(あいじろ)の色彩、戸恒浩人(とつねひろひと 1975~)による照明計画の「粋」(淡いブルー)と「雅」(江戸むらさき)も伝統性を意識したものだ。インテリアも、切子細工のパターンなどを徹底的に活用するほか、デジタル絵巻、工芸的なオブジェ、屏風(びょうぶ)などを置き、日本らしさを強調している。内部の空間としては、最後にスロープ状の回廊を昇って、451.2メートルの最高到達地点に着く体験がユニークである。デザインのみならず、五重塔などに用いられる心柱を利用した制振システムなど、構造や施工も革新的なものとなっている。こうして伝統的な日本のものづくりを意識しつつ、最先端技術を駆使したスカイツリーは、ハイテク和風の塔と言える。