2012年4月、東急文化会館跡地に渋谷ヒカリエが開業した。ミュージカルの劇場をはじめとした文化施設、渋谷らしい街の回遊性とにぎわいをつくる建築計画、そして斬新な外観が話題を呼んでいる。設計は、日建設計、東急設計コンサルタントが手がけた。異なる用途のボリューム群を全体としてひとつの直方体に押し込めるのではなく、縦にそのまま積んで、凹凸が生まれるシルエットが目立つ。こうしたデザインは、オランダの建築設計事務所OMA(Office for Metropolitan Architecture)など、現代建築の前衛が試みていた手法を想起させるが、同時に路線が複雑に立体交差する渋谷のスリバチ状の地形を意識し、さまざまな高さとの応答関係も意図されたものだ。ちなみに、今後、渋谷駅ならびに周辺の一体的な再開発が決定している。渋谷駅は、大正時代から増改築が繰り返され、段差も多く老朽化も進んでいることから、乗り場やホームなどの動線を整理しつつ、新しく43階建ての超高層や大規模な複合施設を含む、3棟のビルの建設が計画されている。これに併せてバスターミナルの移設、地下に雨水を貯める施設、渋谷川に水辺空間も設置するなど、快適かつ安全な都市づくりを行う予定だ。新駅ビルの竣工(しゅんこう)は2027年であり、これから渋谷駅の周辺は長く工事が続くこととなる。