2012年、雑誌「思想地図」の特集「日本2.0」にて発表された、若手建築家の藤村龍至(1976~)が提唱する東日本大震災後の新しい国土デザイン。彼は、福島県双葉町の行政機能が移転し、原発避難民が多い埼玉県が、原発から見ると裏鬼門の方角に当たることに着目し、それを延長すると、フクシマ(原発)、埼玉(郊外化)、浜松(移民)、沖縄(基地)と、現代日本の抱える問題を串刺しにした「問いの軸」になるという。田中角栄の日本列島改造論が新幹線や高速道路によって日本を再編成し、加工貿易で外貨を稼ぐ一体化した経済圏を構築したのに対し、藤村は縮小する社会やリスク分散、東京一極集中への反省を踏まえ、JRの地域区分にそった6道州制に移行することで、複数の自立した経済圏の再編を主張する。他にも新しい公共の核として小学校を基にして、更新時期に差しかかる公共施設の整理、郊外化に対抗してステーションシティーを生かした経済核の形成、地理的な特性を利用したアジアゲートウェーしての沖縄などを掲げている。メタボリズムの時代は建築家による大きなビジョンは見受けられたが、最近ではめずらしい建築の枠を超えた総合的な国土計画である。