アメリカ南部の黒人の間で19世紀後半に生まれたポピュラー音楽の一種。英語ではブルーズと発音される。4小節の同じフレーズを2度くりかえし、最後の4小節でそれをうけるAAB型12小節の構造、ブルー・ノートと呼ばれる独特の音階の使用、悲しみや憂鬱(ゆううつ)をテーマとする歌、歌に呼応するように弾かれるギターやピアノの間奏などを主な特徴とするが、定型から外れた曲も少なくない。奴隷解放後のアメリカ南部の社会の変化を背景に、それまで集団でうたわれてきた農園での作業歌やスピリチュアル(黒人霊歌)の要素を受け継ぎながら、ヨーロッパ的な和音の感覚や、個人的な思いを取り入れた歌として成立した。「ブルー=憂鬱な」という意味のとおり、恋愛や生活上の苦労を吐露する歌が多く、奴隷解放後も続いた人種差別に対する幻滅の象徴的表現と解釈されることもある。ただし感傷にふけるだけでなく、うたうことで悲しみや苦しみを笑い飛ばす歌も多い。1920~30年代の南部の田舎のカントリー・ブルース、スウィング・ジャズから派生した40年代以降のジャンプ・ブルース、電気楽器を使うようになった50年代のシカゴ・ブルースなど、さまざまなスタイルが知られ、ジャズやロックの素材としてもさかんにとりあげられている。